路線価売却

路線価の家やマンションは売却しやすい?

路線価とは、相続税の課税額を算出する際に用いられます。道路に面した標準的な宅地1平方メートルあたりの土地の評価額で、国税庁が毎年8月ごろに発表しています。

路線価はあくまで相続税等の算出で使用される数値です。そのため、実際の市場で取引される不動産価格とは乖離しているのが通常です。路線価は一定の計算方式で算出されるのに対して、不動産の取引価格は、売主は「高く売りたい」、買主は「安く買いたい」という取引当事者の意思が介在するため、価格が一定ではありません。

そのためこれらの価格には乖離が存在します。

そして、一般的に路線価は公示地価や実勢価格より安価になることが多く、路線価で家やマンションを売買するということは、安価になり売却しやすいと言えます。

路線価の実勢価格の割合の計算方法とは?

路線価と実勢価格を比較するためには、公示価格について考える必要があります。

公示価格とは、地価公示法という法に基づき、国土交通省の土地鑑定委員会という組織に専任された不動産鑑定士が現地を調査します。そして、毎年1月1日時点の価格を決めて、世間には3月に公表するという流れです。

そして、実勢価格、公示価格、路線価は一般的に次のような目安が成り立ちます。

実勢価格の目安=公示価格÷0.95
公示価格=路線価÷0.8

これらから実勢価格の目安=(路線価÷0.8)÷0.95
この「0.95」という数値は、不動産業者が使う数値で流通性指数と呼ばれます。不動産業者の査定マニュアルには、比較事例法で0.95~1.05の指数が用いられます。

具体例:路線価で70,000円/平方メートル
公示価格=路線価:70,000円/平方メートル÷0.8=87,500円
実勢価格の目安=87,500円/平方メートル÷0.95=92,105円

この事例では路線価70,000円/平方メートルの地域では実勢価格の目安として92,105円を考えれば良いということになります。但し、取引には様々な要素が介在します。取引価格は当事者で合意がされれば、価格は自由に決められますから、あくまで目安の価格となります。

実勢価格は路線価の何倍になるの?

実勢価格は路線価の約1.3倍を目安とします。但し、前述の通り、取引には様々な要素が介在します。取引価格は当事者で合意がされれば、価格は自由に決められますから、あくまで目安の価格と考えるのが良いでしょう。

マンションの場合路線価はどういう計算になる?

一戸建てであれば、土地と建物で路線価を算出可能です。マンションは土地と建物で分けて路線価評価を算出して、それに対してマンション全体の相続税評価額を計算し、それに持分割合をかけることで、マンション各戸の評価額を計算します。

土地の評価額の計算

①まずはマンションの土地全体の評価額を算出

まず、マンションが建っている土地全体の評価額を算出します。市街地のマンションであれば土地の価格が路線価を参照します。郊外であれば、路線価が定められていない場所もあるため倍率方式で算出します。

市街地の土地評価

マンション全体の土地の相続税評価額 = 路線価 × 地積 × 画地補正率(※)

※画地補正率とは?
路線価を基礎として各画地の評価額を求める場合に、その土地の奥行、形状、利用上の法 的制限等画地の現状に応じた補正を行うための率です。

例えば間口の狭い土地であれば、画地補正率が1.0以下となり、土地の評価額が安くなります。間口が狭いと建物の建て替え時に制限が生じる恐れがあるからです。

郊外の土地評価

マンション全体の土地の相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

②専有部分の敷地面積の割合を乗じて自己の土地持ち分の評価額を算出

マンションの場合、一棟の建物の区分された部屋を所有することになります。そのためマンションは「区分所有建物」と呼ばれて、マンションの自己の持ち分を専有部分と言います。

ではマンションの住人は建物の一室だけを所有しているのかというとそういうわけではありません。マンションの区分所有権を持っている人は、土地に対する権利も持っています。このマンションにおける土地に関する権利を敷地権と言います。

そして、このマンション住人の土地の権利は、専有部分の床面積に応じて決まります。
例えば、マンションの敷地面積が、3,500平方メートルだとして、自分の専有部分の床面積が70平方メートルだとすると、マンションの販売図面等には共有持分:7,000/350,000と記載されています。

建物の評価額の計算

マンションの建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同じになります。通常、マンション各戸の建物の固定資産税評価額がすでに算出されています。

路線価が高いと固定資産税は高い

土地評価は、相互の均衡と適正化が図られるように努めるという土地基本法の趣旨を踏まえ、相続税においては地価公示価格の8割程度を、固定資産税においては同じく7割程度をそれぞれ目途に評価を行っています。

このため一般に路線価が高いと、当然に固定資産税も高くなる傾向にあります。

売却時に必要となる路線価とはどのようなもの?

そもそも土地には「一物四価」という言葉があります。土地には「路線価」の他に「実勢価格」、「公示地価」、「固定資産税評価額」があります。

公示価格

国土交通省が算出する一般の土地取引価格の指標

固定資産税

固定資産税や不動産取得税、登録免許税など不動産関連の税金の計算の基礎となります。3
年に一回価格更新されます。

実勢価格

実際に不動産が取引される際の価格です。

路線価

路線価は「相続税路線価」、「相続税評価額」と言われます。

土地の相続税や贈与税の計算の基礎となる価格が該当します。

毎年1月1日を基準日として、国税庁が7月初旬頃に公表します。相続税路線価は、土地全体の価格をさすものではなく、道路に価格が付きます。

所有地に接している道路に付いた価格に、土地の面積を掛け合わせることで、相続税を計算する際の評価額を求めることができます。公示地価の80%を目安に決定されています。

路線価と不動産売却額の関係性

前述では路線価と固定資産税評価額の関係について説明しました。では、路線価と不動産売却額、つまり実勢価格との関係はどのようになっているのでしょう。実勢価格とはそもそも実際に市場で不動産が売買される際の取引価格です。

そのため、実勢価格は3000万円の売却が適当な土地でも、4000万円で売却することで不動産会社は利益をだすことができますから、実勢価格はケースバイケースで異なると言えます。

路線価はそもそも相続税算出で使用される価格ですから、土地の売買で使用されることはない価格です。路線価は土地の価格ではなく、道路に設定される価格です。その道路と接している土地の税金を求めるために使われているので、土地の売買とは性質が異なります。

そして公示地価を交えて考えてみると、路線価は公示価格の8割、固定資産税は公示地価の7割が目安です。路線価は公示地価と同様に1年に1回、1月1日に更新されます。

人の死はいつ訪れるかわかりません。相続は常に発生するリスクがあります。相続が発生した際に、地価が下落すると路線価の方が実際の市場価格より高くなるケースも想定されます。

そのような場合、実際は土地の価格が下落して、価値が落ちているのに地価が下落する前の金額で算出された路線価で相続税が計算されて支払う税金が高くなってしまう事態が想定されます。

このような事態を防ぐために、公示地価の8割として多少の地価の変動に対応できるようにしているのです。

このため路線価は実勢価格と乖離していることが多く、公示地価よりもさらに安い価格であることが多いのです。

参考:https://tochikatsuyou-abc.jp/rosenkakaku/

路線価の具体的な計算方法

①路線価はどこでわかる?

路線価は国税庁の路線価ページで確認することができます。都道府県一覧から→市区町村→町字とたどっていくと、調査したい地域の地図が閲覧できます。路線価が設定されていない市区町村の場合は、倍率方式で計算することになります。

②路線価の見方

出典:財産評価基準書路線価図・評価倍率表

数次と記号について説明すると、丸で囲んだ「390C」の場合、数字は1平方メートルあたりの価額を1,000円単位で表示しているため、この場合1平方メートルあたりの路線価が39万円となります。アルファベットは、借地権割合となっています。後述致します。

③計算式

土地の評価額=1平方メートルあたりの評価額×宅地面積
※1平方メートルあたりの評価額=路線価×奥行価格補正率

④奥行価格補正率とは

例えば土地が道路に1面しか面していない土地だと、奥行きが長く活用しにくいため評価額が低くなります。その調整を果たす補正数値が奥行価格補正率です。

 

 

 

奥行距離(m) 奥行価格補正率
4未満 0.9
4~6未満 0.92
6~8未満 0.95
8~10未満 0.97
10~24未満 1
24~28未満 0.99
28~32未満 0.98

⑤計算実例

1方のみが道路に面している場合

1方のみが道路に面している場合、路線価の計算はどうなる?350Cの地域で宅地面積200平方メートル、奥行き20mの土地を計算してみます。

この事例で計算を行うと、「35万円(1平方メートル当たりの評価額)×1.0(奥行20メートルの奥行価格補正率)×200(宅地面積)=7,000万円」が評価額となります。

宅地の一方のみが道路に面している土地は、奥行きが長すぎると、道路から離れた部分の利用効率が悪くなりますので、土地の評価額は低くなります。

そのため、奥行距離に応じた「奥行価格補正率」を用いて、土地の評価額を減額します。

2つの道路に面している場合

2つの道路に面している土地は、1方のみが道路に面している場合よりも、利便性が良く土地の評価額は高くなる傾向にあります。

2つの道路に面している土地は「角地」と「準角地」の2種類があります。角地のほうが、準角地より利便性が高いので、高い評価になります。

準角地

準角地とは、一つの道路が折れ曲がってその内側に土地が面しているものを指します。

角地の計算方法

実際の計算方法について確認していきます。

角地の場合、2つの道路に面しており、1平方メートルあたりの評価額を単純に路線価だけでは計算ができません。そこで下記のような計算式を用います。

(正面路線価×奥行価格補正率)+(側面路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率)

これに宅地面積を乗じたものが、角地の場合の評価額です。 「側方路線影響加算率」とは、1面だけが道路に面しているよりも利便性が高いことから、「側方路線影響加算率」という数値で土地の評価額を加算します。

 

 

角地の場合 準角地の場合
0.03 0.02

角地の計算

計算にあたっては、まず2つの面のどちらが正面か決める必要があります。
「路線価×奥行価格補正率」が大きい方が正面路線、小さいほうが側面路線となります。

上記の図の場合でどちらが正面路線になるかを求めてみましょう。
300C側:30万円(路線価)×1.0(奥行30mの奥行価格補正率)=30万円
280C側:28万円(路線価)×1.0(奥行20mの奥行価格補正率)=28万円

350Cの道路が正面路線、300Cの道路が側面路線だとわかります。
1平方メートルあたりの評価額は、

「30万円(正面路線価)×1.0(奥行価格補正率)+28万円(側面路線価)×1.0(奥行価格補正率)×0.03(側方路線影響加算率)=30万8400円/1平方メートル」となります。

土地全体の評価額は、
「30万8,400円/1平方メートル×600平方メートル=1億8,504万円」評価額となります。

準角地の計算

L字型の道路に面している土地が準角地です。計算方法は角地と一緒です。但し、角地より利便性に欠けるため、側方路線影響加算率が異なります。

1平方メートルあたりの評価額は、
「30万円(正面路線価)×1.0(奥行価格補正率)+28万円(側面路線価)×1.0(奥行価格補正率)×0.02(側方路線影響加算率)=30万5,600円」
土地全体の評価額は、
「30万5,600円×600平方メートル=1億8,226万円」となります。

3つ以上の道路に面している場合

こちらも前述と同様に、正面路線を求めます。
(南側)
300C側:30万円(路線価)×1.0(奥行30mの奥行価格補正率)=30万円

東側
200C側:20万円(路線価)×1.0(奥行20mの奥行価格補正率)=20万円

北側
100C側:10万円(路線価)×1.0(奥行30mの奥行価格補正率)=10万円

この結果南側が正面路線価となります。

二方路線影響加算率を計算する
ではこの路線価を算出するために、北側と東側の加算額を算出しましょう。

北側
10万円(路線価)×1.0(奥行価格補正率)×0.02(側方路線影響加算率)=1,000円

東側の道路は「正面路線」である南側の道路からみると、角をつくる関係になります。この場合「側方路線影響加算率」を使って加算額を算出します。

東側
20万円(側面路線価)×1.0(奥行価格補正率)×0.03(側方路線影響加算率)=2,000円

そしt、南側の路線価と併せると、(南側)30万円+(北側)1,000円+(東側)2,000円=30万3千円がこの土地の1平方メートル当たりの単価となります。

30万3千円×600平方メートルで、この土地の路線価は1億8,180万円となります。

二方路線の計算

上記のように正面と裏面が道路に面している土地です。このような土地は、1平方メートルあたりの評価額は下記のような計算式になります。

(正面路線価×奥行価格補正率)+(裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率)

普通住宅地区の場合の二方路線影響加算率は0.02です。また、正面路線価、裏面路線価の区別も「路線価×奥行価格補正率」の大小で決まります。

今回の場合は350C、300Cいずれも奥行は20mですので、正面路線価が350C、裏面路線価が300Cとなります。

1平方メートルあたりの評価額を求めると、

35万円(正面路線価)×1.0(奥行価格補正率)+30万円(裏面路線価)×1.0(奥行価格補正率)×0.02(二方路線影響加算率)=36万6千円

土地全体の評価額は、36万6千円×200平方メートル=7,320万円となります。

倍率地域って何?

全ての土地に路線価が定められているわけではありません。自分の土地を調べると「路線価」ではなく「倍率地域」と記載されているケースがあります。このような土地は、路線価を使わずに倍率方式で地価を評価することになります。

倍率方式で利用される『評価倍率』は、国税庁のホームページから『財産評価基準書 路線価図・評価倍率表』から調べることができます。

参考:http://www.rosenka.nta.go.jp/main_h29/tokyo/tokyo/ratios/city_frm.htm

倍率方式の計算方法は「固定資産税評価額×評価倍率」で算出するので、評価倍率がわかればすぐに算出可能です。

具体例を挙げると固定資産税評価額が3,000万円の土地の場合、評価倍率が1.1だとすれば、相続税路線価は3,300万円になります。

評価倍率は土地の『地目』によって異なります。宅地、田、畑、山林などに分かれており、一般的に宅地の倍率が最も低く、その他の地目は固定資産税評価額の数倍~数十倍が設定されています。

※借地権割合について

借地権とは、土地を借りて、使用する権利のことを指します。借地権はその土地に居住する権利として「財産」として取り扱われます。

そのため、相続した土地の上に他人の建物があれば、建物の所有者には借地権があるので、土地所有者でも建物の所有者の承諾なく土地の処分等はできません。

よって、借地権が設定されている土地は、相続後の活用方法が限定的になってしまう不利な土地だといえるでしょう。

そのため借地権付きの物件は借地権が設定されていることを、勘案して計算することになります。

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